平安物語=短編集=【完】



何と申し上げようかと、肯定も否定もせずに俯く私に痺れを切らした大臣は、「どうなのだ?」と乳母に詰め寄ります。

乳母も困ってしまって、「ええ…恐らく…」と曖昧な答を申し上げました。


大臣は、

「何故もっと早く言ってくださらないのです!
もう三ヶ月ということですか?
何と情けない…」

と恨み言をおっしゃいながら、ひしと私を抱きしめてくださいました。


「この歳で我が子が生まれるなんて恥ずかしいようでもありますが…」

にっこりと微笑まれる御顔には、一筋の涙が光っていました。

「でも本当に嬉しい。
ありがとう、椿の君。」



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