平安物語=短編集=【完】
美しい椿を受け取り、大臣のお気持ちにしみじみと心打たれました。
「さあ、降りましょう。
貴女のお部屋が出来上がっています。」
そうおっしゃって、御自ら抱き上げて降ろしてくださいました。
お腹に負担がかからないようにと気を遣って下さるのにも感激してしまいます。
周りの人々が感嘆し祝福してくれているのが感じられました。
愛しい人に愛され、その方のお子を身篭り、北の方として認められた――
こんな幸せが、二つとありましょうか。
風も木々も鳥たちも、全てが私を祝福してくれているように思えました。
― 椿の上 ―