長閑【短編集】
私はいつものようにゴミ袋をネットの下に入れた。
…さて、さっさと帰って旦那のお弁当を作らなければ。
私が家に帰ろうとした時、
真っ赤なランドセルを背負ったある少女が目に入った。
…珍しい。
最近の子が背負っているランドセルはピンクや青などばっかりで、今時赤色を背負っているその少女につい目を奪われてしまった。
しかもその少女のランドセルには御守りが付いている。
私は見ているうちに懐かしい気分になっていた。
が、その私の視線に気づかれたのかいつの間にか少女も私を見つめていた。
…沈黙の時間。
…このまま変なおばさんと思われてしまっては大変だと思い私は声をかけた。
「おはよう。」
少女は私から視線を逸らし俯いた。
あぁ不審者に思われた?
私は一人で慌てていたが
「…おはようございます。」
小さな声が私の耳に入った。
もし車でも通っていたら聞き逃していただろう。
少女は俯いたまま小学校へと駆けていった。
私はそういえば今日から入学式だと思い出し、明日も会えるのかもしれないぞ。と心の中で考えていた。