長閑【短編集】
「素晴らしい飛びっぷりだね。…りっちゃんでしょ?」
拍手をしながらこっちに近づいてきた男性はそう言った。
「え?」
私の事をりっちゃんと呼ぶ人は一人しかいない。
「勇兄ちゃん?」
目の前に現れた彼は私が知っている彼よりも逞しくなったようだ。
だけど、やはり面影は残っている。
「‥なんで私って分かったの?」
「風貌と着地の仕方が昔のまんま。」
…つまり私は進歩がないと?(苦笑)
「りっちゃんはなんで公園なんかに居るの?」
「えーちょっとむしゃくしゃして…。あはは。」
私が仕方なしに笑うと彼が言った。
「もう大人なのに。」
「うるさいなぁ。いーの少し気が晴れたから。」
「そう?じゃあこの後飲みに行かない?」
「え?」
「ほ、ほら、積もる話もあるし…。」
そう言いながら何故か顔を赤らめる彼に私は笑ってしまった。
2人の再会を
祝福するかのように
公園のブランコは
風もなく揺れていた。
ブランコ end.