長閑【短編集】
そして隼人は缶の蓋を開けた。
「ありゃ?」
ひっくり返して出てきた物は…三つのビー玉だけ。
「ビー玉?」
「…なんでビー玉なんだ?」
「さぁ…?他になんかないのか?」
隼人は缶をひっくり返したまま上下に何回も振った。
すると小さく丸まった紙が三つでてきた。
「“みらいのゆうき”へ。」
祐樹はその中の一枚を拾って読み上げる。
俺も落ちた紙を見てみた。
“みらいのけいへ”
手紙にはそう書かれている。
俺はその拙い文章をざっと読んだ。
「俺のは“キレイな女の子とデートしてますか?”だけだぁー。」
隼人が自分の手紙を読み上げてまたしゅんとなった。
「お前どんな幼稚園児だよ。
…しかも現に夢は叶わず。」
祐樹の言葉に隼人が膨れて言い返した。
「じゃあお前のは何て書いてんだよ?」
「“さっかーせんしゅになっていますか?”」
祐樹は自分の手紙を読んだ。
「…夢がでかいな。」
隼人は不機嫌に呟いた。
祐樹の文章はまともなのでからかう余地なし。
「俺もまだ叶えてないな。ていうかまだ高校生だし。」