長閑【短編集】
「あのちいさくてあおいのがぼく?」
三匹の中で一番下の鯉のぼりを指差して私に尋ねる。
「うん。そうだよ。」
「そのうえのあかいのがママ?」
「…うん。そうね。」
「そのうえのくろくて大きいのがー‥パパ?」
「………うん。」
「ママ?」
この子に教えてあげられるのは一体いつになるのだろう。
早く教えてあげた方がいいのだろうか。
いや、もう少し待った方がいいのだろうか。
そうしている間に時間だけが過ぎていってしまう。