長閑【短編集】
さらに次の日。
今日は燃えないゴミの日である。
私は右手に袋を握りしめゴミ捨て場へと向かった。
ゴミ袋を詰めているとやはり向こうから少女はやって来た。
「おはよう。」
「おはようございます。」
いつもの小さな声で返した少女はそのまま学校への道を歩いていたが、
私はその少女のランドセルに付けられていた御守りが外れる瞬間を見た。
「待って!!」
慌てて少女を呼び止め駆け出し、御守りを拾った。
「落とし物だよ。」
私は少女に御守りを差し出した。
少女は珍しく顔を上げて御守りを見つめている。
…このとき私は初めて近くで少女の顔をハッキリと見た。
目が大きくてキョトンとしているその表情はとても可愛らしい。
「ありがとう。」
少女はそう言い、御守りを受け取った。
気のせいかもしれないが、その声は挨拶の声より少し大きく聞こえたように感じて…。
私は今日を逃したら二度と質問ができない気がして思い切って尋ねてみることにした。
「ねぇ、なんでランドセルの色を赤色にしたの?」
少女は私の顔を見つめていたがやがて口を開いた。