長閑【短編集】
…しかもこっちに走ってくる?
その人は僕の居る場所へと近づいてきた。
それはよく見ると女だった。
制服からすると僕と同じ高校だろう。
ただし、髪の毛も服もスカートもびしょ濡れ。
水溜まりを踏みながらも走って来た彼女は僕の隣で止まった。
さらに雨が彼女に襲いかかる。
僕はその人につい話かけた。
「あのー‥大丈夫?」
「うーん。もうびしょ濡れ。」
彼女はそう言いながら笑って答えを返す。
…いや、笑い事じゃないぞ。
僕は自分の傘を彼女にかけてあげた。