長閑【短編集】
現在時刻 5時06分
「ほらね。」
そう言いながら僕は整理券を取ってバスに乗り込んだ。
彼女も後ろから付いて来る。
やはりと思ったが今日もバスは混んでいた。
僕は本来ならば二人で座るべき席に1人で座った。
「あのさ。」
いきなり、横からさっきの彼女の声。
「隣、座ってもいい?」
「え?」
なるほど、周りを見渡すと僕の隣以外空いていない。
「どうぞ。」
そう返すと彼女はふわりと隣に座って鞄からタオルを取り出した。
自分の頭を拭きながら、
「大丈夫?風邪ひかない?」
なんて聞いてくる。
「風邪?」
…そんなのもういいよ。
雨のバス停での出会いが2人の運命の出会いになるとは、
僕らも梅雨の雨も
まだ誰も知らなかった。
バス停 end.