長閑【短編集】
「…ところでお前結婚しないのか?」
「ぶっ‥は?」
息子は一瞬スイカでむせた。
「お前だって成人したんだし、もうそろそろー」
「いや、ようやく仕事が軌道に乗ってきたとこだから。まだ先かな。」
息子はそう言って俺の言葉をかわす。
「……そうか。」
早く孫の顔が見たいなんて言葉はこいつの前では絶対に言わない。
‥いや、正確には言えない。
「はい、塩。」
女房が塩を持ってきて息子に渡した。
「有難う。」
息子はスイカに塩をふる。
女房はまた台所へと帰って行った。