長閑【短編集】
「おねえちゃんのランドセルは赤だったの。
んでね、わたしはおさがりでもよかったんだけどお母さんがランドセルは新しいの買ってあげるって言ったの。
でもわたしは赤が好きだったからお姉ちゃんとおそろいにしたの!!」
最初は控えめに話していた少女だったが、だんだんと声のトーンが上がっていき今はキラキラした目で私を見ていた。
その姿は普段俯いて歩いている姿と比べるとまるで別人のように思える。
「そっか。赤が好きなんだね。」
「うん!!」
「あ、そうだ。
いつも下を向いてるけど歩く時は前を向いた方がいいよ。危ないから。」
「前?」
「その方がずっと可愛いしね。」
私がそう言うと少女は照れたようにクスクス笑っていた。
次の週になった朝。
私はまた燃えるゴミ袋をネットに詰めていた。
すると、向こうから可愛らしい女の子の声が聞こえてきた。
私が視線を向けるとそこにはあの赤色のランドセルを背負った少女が、私の知らないピンク色のランドセルを背負った少女と楽しそうに談笑していた。
私は迷わず二人に声をかけた。
「おはよう。」
「「おはようございまーす!!」」
二人の少女の元気な挨拶は
私の心を春色にしてくれた。
挨拶 end.