罪線シンドローム
そんな私の心を知ってか知らずか、彼は更に歩を進め、桜の木に手を触れた。


「色がない」


彼はふいに零した。

初めて聞いたその声に、私のココロが呼応する。

……しかし、それに反して口は開かない。


でも、それで良かった。

私が思うモノクロの桜に、彼は同じものを感じている。

それだけで私の気持ちは満たされ、潤って行く。


ただ一つ違うのは、私が興味のないものに対して、彼は関心を持っている。


ダメなんだ。

それじゃダメ。


だから私は彼越しに、桜に興味を持った。


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