罪線シンドローム
−−ある日の夜。


私は自分の部屋で、同居人の麗(うらら)に声を掛けた。


「ねぇ麗。あなたは綺麗でいいわね」


でも、麗は何の返事もしない。

私はさらに続ける。


「ねぇ麗。私もあなたみたいに綺麗になりたい」


やはり何の返事もない。
いつもの事と解っていてもやはり心の中は虚しい風が吹きすさび、それがやがて苛立ちに変わる。


「返事しなさいよ」


そう言って水槽の中に手を入れ、彼女の両手を掴み、そのままそれを引き裂いた。


「やっぱりあなた、綺麗じゃないわ」


泳ぐ事の出来なくなった金魚は、想像以上に醜い。

私は彼女を、窓の外へ放った。

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