罪線シンドローム
俺は、何を想っていたのだろう。愛していた女性の身体を放り投げ、自分の身だけかわしていた。


そう……『愛していた』女性。


俺の目の前に立っていたのは、平岡という人間ではなく、人を象った執念の塊。

俺は紛れも無く、それに恐怖を抱いていたのだ。


……完全にしてやられたのだ。


とっさにかわした先には、出口へと繋がるドアがある。
その出口は、“生”への入口。

人間、生への望みが近くに在れば、その先が見たくなるのだ。


俺もまた、その先に何があるのか見てみたくなってしまった。


何度後悔し、何度夢の中で懺悔する事になるかを考えもせずに……。


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