罪線シンドローム
「そう。手伝って欲しい。」


今まで、誰からも必要とされることなく生きて来た私の心に、一滴の雫が落とされる。


「……何を手伝えばいいんですか?」


と、私が言うのを判っていたかの様に、彼は間髪いれず、言葉を続けた。


「終らせたいんだ。……終わらせたい……」


そう言うと、頭上に疑問符の浮かんでいる私の右手に、フルーツナイフを持たせる。


「俺を殺して欲しい。そうすれば、俺はこの無限地獄の様な悲しみから解放される……解ってくれるね?」


頭の中が真っ白になり、訳が分からない状態の私。でも、これだけは、はっきりと言える。



私はこの男を殺す事は出来ない。



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