罪線シンドローム
「ご……ごめんなさい……私、そんな事……。」


出来ません。と、私が話を終えるまで、彼は待ってはくれなかった。


「じゃあ、どうすればいいんだ!どうすれば……どうすればこの苦しみから解放されるんだ……。」


私は迷った。きっと、この言葉を出せば、私は後戻りが出来なくなる。




解ってはいたが、脳内麻薬が回りきっている今時分、私の唇は、軽くなっていた。


「あの、きっと私、あなたの事が……だから、あなたをこのナイフで刺すことは出来ません。でも、それ以外で私に出来ることがあれば……」


その瞬間、彼の表情が緩む。



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