男×男!?
「悠ちゃん?」
下を向いて適当に走っていたから前なんて見ていなかった。
パシン
腕を捕まれてビックリして顔を上げると、神楽だった。
「っ…///」
いっきに腕の力が抜けて、腕が重力にしたがってだらんと下を向いた。
「…………………持つ。」
神楽はまだ少し低い声で、あたしはビクビクしていた。
「あ、神楽くんお帰りー」
「ん…」
神楽はみんなに作り笑いを見せた。
みんなはベランダで焼きそばを食べていて、あたしは女子組の部屋でサクラ達が持ってくるのをこそこそと食べていた。
サクラは定期的に来てくれて少し話をした。
もちろん小さな声で。
エリも綾香も由羅も来た。
でもみんなが来るのは変だからってあたしが断った。
神楽はベランダの手すりに寄りかかりながら少し離れて笑っていた。
真中に置かれている机はあたしのいる場所からは見えない。
でも離れている神楽の姿は、あたしの目の前にあって、逸らしたくても目の前にいるもんだから離れない。
さっきの不機嫌の神楽はどこに行ったのかって感じで、今の神楽はいつもの神楽だった。
あたしの中の“いつもの神楽”が本当の神楽だったら。
神楽は、一定の距離を保つのが下手くそだ。
嫌な事があるのなら教えてくれたっていいじゃないか。
教えてくれるのなら、あたしはそれを一生神楽の前では言わない。
好きな物があるのならあたしは何回もするよ。
これは神楽が好きだからじゃない。
あたしは神楽の友達だからだ。
たぶんじゃない。
あたしはかなり、由羅以上に人に尽すタイプだから。