男×男!?




「花火、しないの?」

「………今は…できないや。今は女だし」

「持ってこようか?」

「いいよ。する気分でもない」

うん。する気分でもない。
みんなが行くって言ったから来たんだ。

佐伯の浴衣は群青色をしていて、いつもは小さく見える佐伯が、今は女だからか佐伯が大きく、男に見える。
まぁ佐伯は部活してるし体格はいいんだ。
たぶん体質的に筋肉が出来づらいんじゃないのかな。




「………何かあった?」

「何で?」

「いつもの悠はかっこいいけど今は…弱そう」

「ごめんな」

「あっそぅゆぅ意味じゃなくて、……何だか元気無いってか、…辛そうってか……。よく……わからないけど…」


佐伯はその後に
「岡本達も心配してるよ」
と続けた。



その時、あたしは泣きそうだったんだ。

佐伯が、今のあたしの心のど真ん中を見抜いた感じに言ったから。

辛いんだよ……。

神楽がどこかに行くって、あたし達の前から消えるって考えたら。
変態で、何でもできて、でもどこか未完成みたいな神楽。
謎ばかりであたし達を踏み越させない神楽。
でもね、神楽がいて、毎日楽しかったし、あたしは初めてあの由美ちゃんのことを人に言った。

辛くて、
辛くて辛くて
恐くて、
恐くて恐くて、…
誰かに言ったら思い出しそうで、その場で泣き出しそうで、自分が弱く思えそうで誰にも言わずに溜め込んでいたことを初めて言えた人だった。

サクラも、エリも、綾香も、由羅も、…
みんなみんな大好きで、
みんなみんなかわいい子で、
すんごい大好き。

でも大好きだから言えなかった。


それって言い訳なのかな?






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