人形と歯車
ネコ

犯人はだれだ

校門にネコの死体がつきささっていた。



朝のニュースはそれで持ちきりだった。



佐藤はI Pod のボリュームを上げた。



「おい。ダダ。知っているか?」



ボリュームを下げながら、



「またネコの話か?」


「あぁ。ひでえやつもいるな」



うぇ、と苦い顔になる須藤。



「…ただのイタズラじゃないのかな?」



「いやちがうな。めいたんていの推理によるとだな」



佐藤はボリュームを上げた。



「ということになる」


「そうだな」



と返すと須藤はうれしそうに言った。



「ダダ。さすがだな」


またボリュームを下げながら続く言葉を聞いた。



「俺らで犯人をさがそう。ネコをころすなんて許さねえぞ」



「勝手にしろ」



「おい待てよ!つめたいぞ、最近」



いじけちゃうぞ、とぶりっこのように言った須藤を無視して教室の中へ。



須藤を見つけた奴らが須藤を囲んでネコの話をしはじめた。



佐藤はそれらを横目に席につく。



くだらない。



ネコなんて毎日死んでいるよ。



カバンを机のフックにかけて中から参考書を取り出した。



I Podからえいえんと流れる英語のリスニング対策を作業用に聞くクラシックに変えた。


ストリングスの音は佐藤と世界を切り離す音になっていた。
< 1 / 31 >

この作品をシェア

pagetop