人形と歯車

表彰

表彰状を受け取る。



壇上。



全校生徒の拍手に包まれる。



佐藤はちらり、と生徒達を見た。



じぶんの列に戻ると須藤がささやいた。



「わりぃな」



気分が良くないのは佐藤も同じだ。



中井は学校を休んでいる。



「喜べる話じゃないな。でもこれで良かったんだ」



アスファルトにふせて泣く久家がまぶたに浮かぶ。



生徒集会が終わると佐藤の周りには人だかりが出来ていた。



スゲーな、昨日の話を聞かせてくれよ。



だいたい同じことを何人にも聞かれた。



佐藤はただ塾の帰り道に久家を見かけただけだよ、と言うとクールだな、とか謙遜するなよ、とか言われた。



佐藤はあいまいな笑みを浮かべるばかりだった。



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