人形と歯車
「噂は噂でしかない。尾びれがついてまわる。」



佐藤が須藤に言った。


「確かにそうなんだよな。あいつはガタイと性格が不器用だから誤解されやすい」



坂上の話だ。



「それで気になる話があるんだ。」



「どんな話?」



「臨時収入が入ったって話。気のせいかもしれないけど」



「ドラマならよくある話だけどな。金渡されて誰かのかわりにやった、か。」



教室の裏にある黒板に文字を書いた。



グレープフルーツ七十個。



「多すぎるよ。そんなチケット売れてない。」



「そうか?当日券もあるんだったら予備にでも。それに後で食べれるだろ?」



「そんなことよりも」


佐藤はいらだつように言った。



「怒んなよ。カルシウム足りてないぞ。それに金渡してネコ殺して誰にメリットがあるんだ?」



「そうなんだよ。そこがわからないんだ。」


「だったら気のせいじゃないか?」



五十八個、と須藤が書き直した。
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