人形と歯車
校門がくろずんでいる。


夜のそれよりも黒かった。


駐輪場からは見えるが校門からは見えない位置にいる。



須藤が身体を乗り出させている。



「イーグル。どうだ?」



イーグルとは佐藤のことらしい。道中のひまつぶしだと思っていた。



「いやお前の方が見えるだろ?」



「お前じゃない!ジャガーだ」



「それなら何で私がマンドリラなのよ」



似合うだろ、どこが、お前に、なんで、



「もういいよ。あきたし帰ろう」



中井が言った。



シャツをパタパタさせると谷間が見える。



こむぎいろにやけた肌のせいで小さく見えた。



「帰るか」


須藤があきるまでに一時間もかからなかった。


あー見つからないもんだなーとつぶやきながら校舎を見上げた。



「肝だめししてからかえらない?」



と言い出したのは中井か須藤か。



佐藤は理科室と音楽室は欠かせないな、と答えた。
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