花火
「私も、たっくんのこと好きだよ」
その声は、少し震えていた。気付かぬフリをして、俯く春香の顔を持ち上げ、そっと唇を重ねた。
「うっ、しょっぱい」
「お前、折角の雰囲気が台無しじゃん」
そう言って、もう一度唇を重ねた。きつく抱き締めた春香の体は、服の上から見るより大分細かった。女性らしい福与かな胸の膨らみも、柔らかな弾力も、あまり感じられない程に。そのまま部屋に戻り、ベッドに倒れ込んだ。お互い一糸纏わぬ姿になると、余計にその体は弱弱しく思えた。例えではなく、本当にガラス細工の様なその華奢な体を、優しく、ゆっくりと、時間をかけて愛した。
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