花火
春香と過ごした二日間と比べると、二倍にも、三倍にも感じる長い五日間が始まった。電車に乗り、いつもの駅で降り、会社に向かう。残業をこなし、家路に着き眠る。そんな単調な一日を、後五回も繰り返さないといけないのか。そう思うと朝から憂鬱になった。だが、今はそんな日々にもご褒美が待っている。今週の土曜は隅田川の花火大会だ。浅草だと梅ヶ丘の家に帰るより、平井の春香の家の方が随分と近いな。また夜は春香の家に泊めさせてもらい、甘い時時間を過ごそう。男という生物はなんと愚かな生き物だろう。一度体を重ね合わせれば、次からはその行為が必然的に行われると思ってしまう。
何はともあれ、この五日間を乗り越えなければならない。そう思っているのは春香も一緒だし、一人じゃないと思うだけで、人は張りきれるものだ。カウントダウンをするように、一日一日をこなしていった。
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