花火
窓からの景色は高速に流れていき、確実に故郷を離れて行った。ぼんやりと窓の外を眺めながら、明日からの仕事を思うと、気が重くなった。だが、生きて行く為には働かなくてはならない。分かっていても、億劫な気持をなかなか拭いきれなかった。後三日もすれば春香に会える、そう思うことが唯一、今の自分を鼓舞していた。これで春香の存在がなかったら、何の為に東京に戻るのか分からなくなりそうだった。東京にいる時は地元への懐かしさや、恋しさなど感じないのに、やはり産まれ育った町というのは、不思議な力を持っていた。或いは、長年生きてきた町の記憶を体が思い出し、その空気をもっと求めているのかもしれない。