花火
「知らなくていいの。知らないまま、帰って忘れて。他に大切な人がいるでしょ?昨日の電話で分かったの。女の感は凄いんだから」
自嘲するような、駄々をこねる赤ん坊を諭す様な、落着いた声だった。
「知る権利があるだろ」
「知って何が出来るの?知ってどうするの」
始めて彼女は振り向いた。その目は赤く、やり場のない憎しみに染まっていた。何でこんなことになったんだ?まだその理由が一切分からなかった。
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