花火
「何も出来なくても知りたい。それを知らなくちゃ、俺も前に進めないだろ」
このごに及んで自分のことを一番に気にしている自分に気付いた。最低だな。
「前?たっくんには、前があるものね」
再び背を向け、海に向かって呟いた。
「病気なのか?」
僅かに頭が上下した。
「でも今の医療だったら、大抵の病気は治るだろ?」
現代医学と、若さがある。小さな、ほんの僅かなズレの様な沈黙が流れた。
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