花火
体が悲鳴を上げたのは、翌週の土曜日だった。たっくんとの二週連続の花火大会デートの約束日だった。朝六時過ぎに目が覚めると、急に激しい吐き気を催した。急いでトイレへと向かうと、嘔吐した。風邪でも引いたのか、はたまた食当たりか、そのどちらでもなかった。便器の中は真っ赤に染まっていた。全身から血の気が引いていった。何が起こったのか分からず、呆然と立ち尽くした。夢ではないか?真っ赤に染まった便器のその赤さだけが、現実を物語っていた。恐くなった。恐くて膝が震え、今にも叫び出したかった。でも頬の筋肉が微かに震えるだけで、それ以上は何も出来なかった。口の中には、確かに鉄の味が広がっていた。小刻みに肩が震え、やがて頬を一筋の涙が流れた。気が付けば膝を崩して、泣いていた。どうしていいか分からず、何が起きているのかさえ分からず、呆然と、正面の一点を見つめながら、泣いていた。心の中で何度も叫んだ、たっくん、たっくん、たっくん!何で今ここにいてくれないの。