花火
食欲不振から疲れの取れない体、追い討ちをかけるように腹痛と、背骨の辺りに不快感を感じだしたのは、ここ一ヶ月程のことだった。徐々に顔色が黄色がかりだし、ファンデーションが濃くなっていた。江戸川の花火大会の日に、「化粧濃くなったんじゃない?」そう言われた時に、自分でも気付かぬ内に、ドンドン濃くなっていることを思い知らされた。体調がすぐれないのは分かっていた。もしかしたら、と頭に浮かぶこともあったが、まだ若いし、自分に限ってはない。暑さにまいっているのと、疲れのせいだと思っていた。思おうとしていた。その望みを、目の前の真っ赤に染まった便器が、崩していった。
< 267 / 427 >

この作品をシェア

pagetop