花火
恐い、一人取り残されることが、絶望が、悲しみが、癒えることない傷が、何よりも、その瞬間を目の当たりにすることが。それでも一緒にいたかった。残りの日々を二人で埋めたかった。何がそこまで駆り立てるのか、それは分からなかった。彼女に対するそこまでの愛情の根拠も、分からなかった。それでも胸の中を駆け巡る思いを、止めることはできなかった。誤魔化すことは出来ても、抗うことは出来そうもなかった。
『色々なことを調べたんだ。様々な感情がぶつかり合って、まだ自分の気持ちに整理がついていないんだ。いくら考えても、どうしたらいいのか分からないんだ。でも、どうしたいかだけは分かったんだ。俺は春香と一緒にいたい』
送信完了という文字が画面に浮かんだ。一つ一つ言葉を選んで、慎重に文章を組み上げた。もっと沢山言いたいことはあったのに、それ以上は言葉にすることが出来なかった。これ以上は、嘘を交えてしまいそうだった。返事はこないかもしれない、それは承知の上だった。このメールが春香をより苦しめることになるかもしれない、無責任な行動かもしれない、それも分かっていた。

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