花火
家に着いたのは七時を過ぎた頃だった。昼間に何度となく鳴った携帯電話は、疲れきったように静まり返っていた。着信履歴とメールの受信フォルダには、無視され続けた足跡だけが残っていた。着信画面に成沢拓哉と表示される度に、胸を詰まらせながら終話ボタンを押した。メールが来る度に、中身も見ずに画面を閉じた。本当はすぐにでも電話に出て、メールに返事をして、電車に飛び乗り会いに行きたかった。でもそんなことは出来なかった。あなたが大切だからこそ、深い闇の底へと道連れには出来なかった。
これでいいのだ。私はこれから病気と闘うでもなく、残された日々を真っ当するのだ。もう涙は流さない。心の中で囁いた、たっくん、誕生日おめでとう。先週はごめんね、東京に帰って来たなんて、嘘のメールを送って。
これでいいのだ。私はこれから病気と闘うでもなく、残された日々を真っ当するのだ。もう涙は流さない。心の中で囁いた、たっくん、誕生日おめでとう。先週はごめんね、東京に帰って来たなんて、嘘のメールを送って。