花火
毎日が戦いだった。折れそうになる心を、自暴自棄になり、何もかもに投げ遣りな心を、黙って抱きしめてくれた両親。そんな彼らに対し、私は行き場のない感情を何度となくぶつけた。小さな不安が、だんだん大きく広がって行き、やがてブラックホールの様に全てを飲み込んでいった。その恐怖に抗おうともがくが、努力も空しく、いとも簡単に暗闇に飲まれてしまった。そんな姿を両親は、時に黙って見つめ、時に出来る限り励まそうと振舞ってくれた。そんな姿が余計腹立たしく、私は更なら闇に足を沈めて行った。それは優しく包み込む様に私を受け入れ、耳元で囁いた。
「お前は一人だ。お前は一人だ」
私は一人だ。両親の姿が遠ざかって行った。たっくんの姿が遠ざかっていった。遠ざかる程に必死に腕を伸ばした。求めれば求める程に、期待も失念も大きくなっていった。その両方が限界を超えた時に、受け入れた。期待も失念も、もうすぐ出来なくなることを。そう悟った瞬間、左手の細い親指は、携帯電話の通話ボタンを押していた。それは最後の夏も終わり、秋の気配漂う、九月最後の金曜日だった。
「お前は一人だ。お前は一人だ」
私は一人だ。両親の姿が遠ざかって行った。たっくんの姿が遠ざかっていった。遠ざかる程に必死に腕を伸ばした。求めれば求める程に、期待も失念も大きくなっていった。その両方が限界を超えた時に、受け入れた。期待も失念も、もうすぐ出来なくなることを。そう悟った瞬間、左手の細い親指は、携帯電話の通話ボタンを押していた。それは最後の夏も終わり、秋の気配漂う、九月最後の金曜日だった。