花火
時は穏やかに流れた。ところどころで、その動きを止めていたのではないかと思う程に。この町自体がそういった空気に包まれているのか、この家の中だけなのか、もしくはこの世の中で、自分だけがそんな時の流れに身を任せていたのか、それは分からない。こんな穏やかな時の流れを感じたのは、小学校高学年の、永遠の様な夏休み序盤の、午後の一コマいらいの様な気がした。
お父さんはソファーでまどろみの中を彷徨っていた。春香とお母さんは、何やら編み物に興じていた。そんな光景を眺めていると、自分はこの家の飼い猫か、置き物にでもなってしまったかの様に錯覚した。それほどまでに打ち解けていた。皆がそれだけ心を開いていてくれたのだ。それは僕のためではなく、一人娘の春香の為ために。
お父さんはソファーでまどろみの中を彷徨っていた。春香とお母さんは、何やら編み物に興じていた。そんな光景を眺めていると、自分はこの家の飼い猫か、置き物にでもなってしまったかの様に錯覚した。それほどまでに打ち解けていた。皆がそれだけ心を開いていてくれたのだ。それは僕のためではなく、一人娘の春香の為ために。