神威異伝
三章・ 火の記憶
朝早くから白月村を出て、日暮れ直前に白山村に着く事が出来た十夜達。
村に入って直ぐ、十夜達はある噂話を聞かされた。
「“人に化ける狼”がいる…?」
日向が宿の手続きをしている隣で、十夜が気の抜けた声を溢した。
首を縦に頷かせながら、宿の主人が言った。
「そうなんだよ!!昔から、この村じゃ有名な話なんだ」
宿の主人は頼んでもいないのに、話し続けた。
「黒狼(こくろう)って言うんだかな。背丈が大の大人程あって…毛が、青がかった黒い色してんだ」
「そんなの…只の迷信でしょ?」
熱く語る宿の主人とは正反対に、理緒は冷たく言い放った。