神威異伝
「…分かった。じゃあ、そうする」
理緒は自分の荷物の中から衣類を取り出し、借りた部屋の側にある風呂場に向かおうとした…が。
「理緒」
十夜に呼び止められ、理緒は足を止める。
「何よ」
理緒が顔だけ振り向き、十夜を見た。
…すると十夜は、笑いながらこんな事を言った。
「誰もお前の風呂、覗いたりしねぇからゆっくり入って来いよー」
「な…っ!!」
十夜のからかいの言葉に顔を真っ赤にした理緒は、近くにあった棚の上のこけしを掴み―…
「この…っ変態十夜ぁっ!!」
十夜の顔面めがけ、全力で投げつけた。
「ぐぉ…っ」
…理緒の手から放たれたこけしは“めきょっ”と嫌な音を起たせ、十夜の顔面にめり込んだ。