神威異伝



林檎の様に顔を真っ赤にした理緒が、すたすたと早歩きで部屋を出た後…日向が、十夜に声をかけた。


「十夜…何やってんだよ、お前」
「あっはっは!!理緒はやっぱ面白いなー」


自分の顔にめり込んでいたこけしを引き抜き、十夜が笑った。

そんな十夜を見て、日向が呆れたように溜め息を吐き、呟く。


「はぁ…。後で口きいてもらえなくても、俺は知らないからな」
「大丈夫だって」


十夜は、はっきりと呟き…こけしを元あった場所に戻した。


「理緒だってそんなにガキじゃないんだ、大丈夫だろっ」
「…そうだと、良いな。十夜」


そう言い残し、日向も台所へと姿を消した。

一人、部屋に残った十夜は呑気に愛刀…漆梁の手入れを始めた。


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