神威異伝
『あいつは…あいつだけは許さねぇっ!!』
…昔の自分は、握っていた拳を更に強く握った。
不意に、昔の自分が振り返った時―…
(見つけましたよ)
(っ!!?)
「なっ!!」
昔の自分の数歩後ろに、誰かが立っていた。
夜の森の暗闇の中、ひっそりと立つその人物かり…夜の風にのり、微かに血の匂いがした。
舌打ちを漏らし、昔の自分はまた走りだした。
(くくくく…っ、まだ逃げるのですか?…無駄なのに)
その様子を見て、昔の自分の後ろに立つ人物は、楽しそうに含み笑いを漏らした。
鬱蒼(うっそう)と茂る森を、昔の自分が走り、誰かが歩いて追いかける。