神威異伝
月明かりに導かれ少し開けた場所に出た時、昔の自分の足が止まった。
(くっ!!)
「嘘だろ…っ」
吹き抜けていく夜風を全身に浴びながら、目の前に広がる光景に…昔の自分も、十夜も絶句した。
崖。
後数歩行けば、断崖絶壁から落ちてしまいそうな場所。
…逃げる事も、隠れる事も出来ない場所。
(おや、もう逃げられませんねぇ…)
そう呟いて、昔の自分を追って来た人物が木々の間から姿を現せた。
月明かりに照らされ、その人物の姿が見えてきた。
夜の闇に紛れてしまいそうな、漆黒のフード付きのマント。
そして、その顔は―……