神威異伝
(うぉおぉおっ!!)
昔の自分の体は“言霊”に吹き飛ばされ……体が地面から離れ、宙に浮いた。
そのまま重力に逆らう事も出来ず、崖の下へと落ちそうになった時……昔の自分は右手を必死にのばし、崖の淵を掴んだ。
夜風が吹く度に、昔の自分の体も揺れる。
(っ、くそ……っ)
(おやおや、大変ですねぇ)
昔の自分を見下す様に、男が崖の淵に立っていた。
(うるせぇ……っ)
腕一本で自分の体を支えながら、昔の自分が口を開いた。
男が冷めた声で呟く。
(まだそんな事が言えるか)
(がっ!!)
昔の自分が微かに、悲痛な声を漏らした……男に、右手を踏まれたから。