神威異伝
右手を踏みにじりながら、男が言った。
(いい加減諦めて、命ごいでもしたらどうだ?)
(ぐ……っ誰が、するかよ…っ)
右手の痛みに耐えながら、昔の自分がはっきりと答えた。
その言葉を鼻で笑い、男が呟く。
(ふん、つまらん奴だ。……まぁ、命ごいなどしても助けてやろうとは思わないがな)
(………。)
男を睨みつけ、昔の自分は歯を食いしばった。
『やべぇ……手に、力が入らねぇ』
踏みにじられている右手は、血が滲み感覚すら無くなりかけていた。
不意に、男が足の動きを止めた。