神威異伝



十夜は走るのを止め、十夜達が泊まっている宿の裏庭へと戻って来た。


「あ゛ー……、気持ち悪ぃ」


汗が染み込んだ服が気持ち悪くなった十夜は、服を脱ぎ腰に巻き付ける。

上半身裸体の格好のまま、十夜は漆梁の素振りを始めた。


素振りをしている傍ら、頭の中では先程の夢の事を考えていた。


(俺には仲間がいた……駄目だ、思い出せない。)

(でも、でも一つだけ分かる)


(あの男、俺の仲間を殺したあの男の声を……俺は知ってる気がする)


「でも、思い出せないんだよなぁ……」


ぽつりと呟き、十夜は溜め息を吐いた。



十夜が素振りを止めたのは、人々が起き始める時間帯だった。

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