神威異伝



十夜達が寝ていた部屋よりも小さい部屋の中心に、布団があった。

そして、布団の中には理緒が寝息をたて眠ったままだった。


十夜が溜め息を吐く。


「おい、理緒起き――……」


そこまで言いかけて、十夜は口を閉ざした。

まだ起きようとしない理緒の側に、十夜がしゃがみ込んだ。


「髪……ほどいてんだな」


そう呟いて、十夜は少し理緒の髪に触れてみた。

いつもなら結ばれている筈の髪も寝ている今は、ほどかれている。


そんな当たり前の事にも、十夜は何故か反応してしまったのだ。


「……初めて見るかもな。髪、ほどいてる理緒なんてよ」



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