神威異伝
理緒は立ち上がり、腕を組んだ。
「『何だ……』ってどういう意味よ」
「いや、何でもねぇよ」
頭を掻き、十夜はいそいそと寝袋から出た。
そして、じーっと理緒を見つめる。
(……いつもの理緒、だよな)
昨日の虚ろな瞳をしていた理緒の欠片もなく、いつもの理緒に戻っている事に……十夜は内心、安堵していた。
日向から一応聞いていたのだが、それでも十夜は心配していたのだ。
「……な、なによ」
何も言わないまま十夜に見つめられ、理緒が口を開く。
微かに、その頬は赤い。
「…………ごめん、な」
十夜は、ぽつりと呟いた。