神威異伝



その声の小ささに、聞き取れなかった理緒が首を傾げる。


「十夜、あんた何か言った?」
「こっちの話だ、気にすんな」
「独り言?」
「あー……まぁ、そんなもんだな」


本当は、昨日一人にした事に謝った十夜だが……理緒はその時の記憶がない為、分からない。

そうであっても、十夜は一言だけ、謝っておきたかったのだ。


笑って誤魔化して十夜は立ち上がり、眠気を吹き飛ばす背伸びをする。


「……まだ、寝惚けてるのかな」


真剣に十夜の言った呟きについて考えている理緒の姿が、何だかおかしくて……可愛いくて、十夜は理緒に気づかれない様に微笑んだ。


< 163 / 237 >

この作品をシェア

pagetop