神威異伝



三人は、目を見開いた。

だが、澪の話に口を挟まない。


『今から十四年前、この滝の側で私は大怪我を負った少女を保護した』


その日の事を思い出す様に、目を閉じて澪が呟く。


『その少女の怪我が酷くてな、私は村にまで運ぶのが困難だと判断した。そして……私の家で少女が歩ける様になるまで、看病する事にした』


澪は立ち上がり、出入口の方へと歩き……外を見つめた。


『少女の名前は、京(みやこ)。白山村の娘で、山菜を取りに来て滝から落ちたらしい。……明るい子でな、見ず知らずの私に色々な話を聞かせてくれた』


澪の話に出た“京”という名の娘。

その娘が、白山村の宿の主人が言っていた十数年前に行方不明になったという娘の事だろう……と十夜は考えた。


おそらく、日向と理緒もそう考えている筈である。

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