神威異伝
「……あんたが、さっき言ってたのは」
躊躇いがちに、十夜が口を開いた。
「京って人の事、だったんだな」
『……あぁ』
澪は頷いた。
『私は京に伝えた、白山村の者がお前を探していると……私は彼等の元に行くよう、京に言った。だが京は首を横に振り、この姿の私を抱きしめてくれた。「あなたの側にいたい」と、そう言ってくれた』
三人に視線を向け、澪が言う。
『だから……私もそれ以上何も言わなかった。京は怪我が治ってからも、この家に残り……数年もしない内に、暁を産んだ』
目を閉じ、澪は呟いた。
『楽しかった。ただ京と暁と過ごす日々が、堪らなく幸せだった……』
「あの、もしかして……京さんは」
日向が恐る恐る尋ねると、澪が小さく頷く。
『……死んだよ。暁を生んでから、三年がたった頃に…病気でな』
その場に座り込み、澪が口を開く。
『私の知らない病気だった。どんな薬草を使おうと、どんな治療を行おうと……全く効果がなかった』
きつく、目を閉じた澪の姿がとても辛そうに……悲しそうに、十夜達の目に映った。