神威異伝



家に勢いよく、暁が何故かずぶ濡れで入って来た。


「お父!!川にいた、おっきな魚つかまえて来たよっ。ほら!!」


両手に掴んだ自分の片腕分よりも大きな川魚を自慢げに見せ、暁が声を張る。

澪が近づき、暁の頭を撫でた。


『……成程、確かに大きいな』
「でしょっ?」


嬉しそうに笑う暁に、澪が小さく溜め息を吐く。


『……だかな、暁。頼んでおいた水はどうした?』
「え?…………あ、ああぁっ!!」


本来、自分がするべき事を忘れていたのに気づいた暁は大声で叫んだ。

澪が微笑む。


『ほら、早く取っておいで』
「う、うんっ」



びっちびっちと跳ねる川魚を澪に押し付け、暁は再び外へと駆け出そうとした……が、涙を流したままの十夜を見て足を止めた。


「と、十夜にーちゃんどうしたの!!?なんで泣いてるの?」
「おっ?おぉ……、これはな」


急いで涙を拭い、十夜が口を開いた。


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