神威異伝
今まさに料理に箸を伸ばそうとしていた十夜は、澪の真剣な表情に負け、箸を下ろした。
「どうしたんだ?澪」
日向と理緒も、澪の言葉を待つ。
暁は、顔を少しうつ向かせていた。
『この子を……暁を一緒に、連れて行ってやってくれないか?』
暁を除く三人は目を見開いた。
澪は更に続ける。
『昨日、暁がお前達に助けられたのも夜に聞いた。……ありがとう』
そう言って頭を軽く下げる澪に、日向が慌てて口を開く。
「澪さん、顔を上げてください。あれくらいの事、するのは当然です」
『……本当に、ありがとう』
もう一度礼の言葉を言い、澪は顔を上げた。
不意に、十夜が口を開いた。
「……あんたの言いたい事は分かった。だけど、それじゃあ納得出来ねぇな」
澪は少し眉をひそめ、暁の肩が微かに揺れた。
暁に視線を向け、十夜が言った。
「暁、お前の口から言え。……お前の気持ちを自分の口で、自分の言葉で言うんだ」