神威異伝
「嘉禄様!!」
「騒ぐな、マントをかすめただけだ」
声を張る斎雲に、嘉禄が手短に言葉を返す。
十夜は突き入れた漆梁をそのまま横に薙ぐが、嘉禄は後ろに跳び退いてかわした。
その隙を見逃さないように、理緒は近くに倒れていた旅人だった物に駆け寄り…。
自分の短刀を拾い上げ、嘉禄に投げつける。
短刀は弾かれず……嘉禄に素手で掴まれた。
嘉禄は短刀を握り直し、十夜との距離を詰め寄り短刀を振るう。
「ちっ」
十夜は短刀を漆梁で受け流し、振り上げる。
嘉禄は少しだけ体を動かし、それを避ける。
「そこだあぁっ!!」
その動きを先読みしていた十夜は嘉禄の体を狙い、漆梁を振り上げる。
嘉禄は今度は避けようとせず、短刀の切っ先を逆に向け…振り上げた。