神威異伝
―…甲高い金属音が響き渡った。
嘉禄の振り上げた短刀は、漆梁の柄に当たり…。
十夜の手から離れ、十夜から少し離れた地面に突き刺さった。
…一瞬、二人の動きが止まった。
しかし、直ぐに十夜が漆梁を拾い上げようと一歩後ずさった瞬間。
「行かせると思うか?」
嘉禄が短刀を持たない方の手を十夜に向け…
「吹き飛べ」
そう呟くと、嘉禄の手から波のように目に見えない力が押し出され…十夜は吹き飛ばされた。
「がぁっ!!」
十夜の体は近くに建っていた家の壁に、派手な音と共にめり込んだ。
「十夜っ!!」
理緒が十夜の元に駆けよろうとした時…。
「動かないでもらいましょうか?お嬢さん」